「ペンギン・ハイウェイ」は、森見登美彦(もりみとみひこ)が書いた小説です。
2010年に第31回日本SF大賞を受賞。
2018年8月にはアニメ映画にもなっています。

この記事では、小説の「ペンギン・ハイウェイ」と、映画の情報をお伝えします。

ジュヴナイルとして読んでいても心地の良いこの作品。
(juvenile:「少年少女の」という意味で、ディーンエイジャーを対象にした作品を指します)
夏にぴったりの爽やかなファンタジー小説ですよ!

あらすじ

ある夏、郊外の街に突如現れたペンギンたち。
南極にいるはずのそれらは、捕まえようとしてもこつぜんと姿を消してしまいます。

そんな中、小学4年生の「ぼく」は、この事件にある仮説をたてます。
歯科医院の「お姉さん」が持つ、不思議な力が関わっているのではないか、と……。

登場人物たち

主人公は「ぼく」こと、小学4年生のアオヤマ君
「ペンギン・ハイウェイ」は、彼の視点で綴られています。
「きっと将来は偉い人間になるだろう」と自分でも思っているくらい、毎日まめにノートをとっている子です。
口調も大人びていて、「たいへん」「~である」などなど。
(そして、お姉さんのおっぱいが気になるお年頃)

その「お姉さん」は気さくで奔放ながら、どこかミステリアス。
彼女はアオヤマ君が通う歯科医院に勤めており、彼のことを「少年」と呼びます。

他にも、アオヤマ君のクラスメート、アオヤマ君のお父さんや妹、「海辺のカフェ」店主のヤマグチさん、などなど。
そして何よりペンギンが登場し、物語を彩ります。

アオヤマ君が調べたところによると、ペンギンの種類はアデリー・ペンギン。
南極とその周辺の島々に生息しており、郊外の住宅地には生息していないはず、ですが……?

ちなみにタイトルの「ペンギン・ハイウェイ」とは、ペンギンが海から陸へ上がった際に決まって歩くルートのこと。
アオヤマ君はその名前が気に入って、ペンギンの出現に関する研究を「ペンギン・ハイウェイ研究」と名付けました。

書籍について

単行本は、2010年5月に角川書店でハードカバーが刊行されています。
その後、文庫サイズが2012年に発売されました。

ちなみに、単行本はすでに古書のみとなっていますが、文庫と同様にくまおり純さんが表紙イラストを担当。
ハードカバーと文庫でイラストが異なります。どちらのイラストも素敵ですよ!

ペンギン・ハイウェイ 森見 登美彦:文庫 | KADOKAWA

また映画化に伴い、映画のイラストが表紙になった文庫も登場。ぜひ店頭で確認してみてくださいね。

角川つばさ文庫でも刊行されており、子ども向けにとても読みやすくなっています。
一部の文章を分かりやすく書きかえたり、ふりがながふられていたり、挿絵も豊富。
「百聞は一見にしかず」のことわざや偉人なども、注釈で説明が入っていますよ。

コミカライズも進行中。2018年7月には待望の第1巻が発売されました。
漫画を担当するのは屋乃啓人(やのけいと)さんです。

amazonのオーディオブックサービス「Audible」(オーディブル)でも「ペンギン・ハイウェイ」が配信されています。
安國愛菜さんがナレーターを担当。
聞きやすい声にキャラクターの演じ分けも上手と、カスタマーレビューも高評価です。
本を読めない場所でも、音で物語が楽しめます!

参考サイト

Amazon.co.jp: ペンギン・ハイウェイ

Jun Kumaori(くまおり純サイト)

「ペンギン・ハイウェイ」の魅力

学者のようなアオヤマ君

主人公のアオヤマ君は、お父さんに書き方を教えてもらい、とにかくノートに記録する少年です。
「研究」と称し、ペンギンのことや普段の日記、友達の「スズキ君帝国観察記録」など、本当に色々な事柄をまとめているのが特徴。

そのおかげなのか、多くの事件や謎にも、研究者のように分析を進めます。
その考えが物語にも丁寧に表現されていて、謎を少しずつ解いていく姿は、まるでミステリーの探偵か科学者のようです。

ただ、普段は落ち着いているのに、少年らしく喧嘩をしたりも。
特にいたずらっ子のスズキ君とのやりとりは、すったもんだの大騒ぎです。
そんなハプニングの最中ですらどこか冷静で理屈っぽい、そんなギャップもこの作品の魅力となっています。

ミステリアスな「お姉さん」

「お姉さん」は歯科医院に勤める女性。
海辺の街から、アオヤマ君のいる郊外へ引っ越してきました。

あらすじでお伝えする通り、お姉さんには不思議な力があります。
小説の序盤、お姉さんはアオヤマ君が見る前でコーラの缶を上へ放り投げます。
すると、なんとコーラがペンギンに変身してしまうのです。

風に吹かれながら、お姉さんはまぶしそうに額に手をかざした。
「私というのも謎でしょう」
お姉さんは言った。「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」

お姉さんは自分でも分からないこの謎を、アオヤマ君に解いてほしいと伝えます。
アオヤマ君を「少年」と呼ぶ様子は飄々としていますが、なんだか儚げでもあり……。

この二人のやりとりや関係性は、物語が進むにつれ変化していきます。
特にクライマックスの描写は見事。
アオヤマ君が仮説ではなく自分の信念で語る姿は、涙すら誘います。

マスコットであり根幹の謎・ペンギン

物語の中核ともいえるペンギンは、実に様々な場所に出現します。
言葉を話すことはありませんがキウキウと鳴き、南極ではなく草原や街をよちよち歩く姿は、とってもユーモラス。
この物語の根幹を成しているとも言える、まさにマスコットキャラクターです。

ビジネス書好きにもオススメ

アオヤマ君や同級生のハマモトさんは、ノートをよく書く子です。
そうしてたくさんの問題を明らかにし、仮説や考察を練っています。

□問題を分けて小さくする。
□問題を見る角度を変える。
□似ている問題を探す。

森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」より

お父さんに研究の取り組み方を教わりつつ日々を過ごすアオヤマ君。
上記の他にも、とても分かりやすく問題解決の方法が書かれています。
そしてもちろん、この分析が物語にも効果的に関わってくるんです。
普段ビジネス書は読むけれどフィクションを読まない、そんな方も楽しめるのではないでしょうか?

作者:森見登美彦について

森見登美彦(もりみとみひこ)は、1979年、奈良県生まれの作家です。
京都大学に在学中、2003年に執筆した「太陽の塔」第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビューしました。
代表作「夜は短し歩けよ乙女」は、山本周五郎賞を受賞しています。

他の作品

休業中だった期間もありましたが、決して作品は少なくありません。
「四畳半神話大系」「有頂天家族」といった、京都を舞台にした作品が多いのが特徴です。
また、「太陽と乙女」(エッセイ)なども上梓しています。

ちなみに作者は無類の文房具好き。特にノートは売るほど持っていらっしゃるとか。
これがアオヤマ君の文房具好きにも繋がっているようですね。

「ノートやメモ帳をたくさん買えば、アイデアもたくさん湧いてくる」との妄想にかられて、大きさも仕様も様々なノートを買いました。

参考サイト

この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ(森見登美彦日誌)

Amazon.co.jp: 森見 登美彦:作品一覧、著者略歴

映画について

ここからは映画についてお伝えします。

予告版はこちら。
美しいビジュアルや音楽、宇多田ヒカルの主題歌も相まって、ひと夏のはかなさを感じられます。
青空や水の描写がさわやかですね。


映画『ペンギン・ハイウェイ』予告1


映画『ペンギン・ハイウェイ』予告2

アオヤマ君の声は北香那(きたかな)さん。声優は初挑戦ということですが、それを感じないほどしっくりしています。
小学4年生の妹さんがいらっしゃるそうで、授業参観を見に行って男の子の声を研究したのだとか。
お姉さん役には蒼井優(あおいゆう)さん、ハスキーでリアルな声ですね。

こちらの映画作品には、設定資料集や公式読本が刊行されています。ぜひ映画の鑑賞前後にチェックしてみてくださいね!

参考サイト

映画『ペンギン・ハイウェイ』公式サイト

声優初挑戦で主演に抜擢! 北香那が語る、『ペンギン・ハイウェイ』“アオヤマ君”の役づくり|Real Sound|リアルサウンド 映画部

「ペンギン・ハイウェイ」アニメ映画化!原作者・森見登美彦氏インタビュー | 読書ログプラス